大して売れていない僕がこんなことを長々と書いたところで、ダサいかもしれないけど……
2020年の東京オリンピックのエムブレム問題を皮切りにそのデザイナーの過去の作品の粗探しが始まり、さらには他のデザイナーの作品にもパクリがないかと躍起になって探すことまで流行りだしている。しかも流行に便乗してアマチュアが独自のエムブレムを発表して売名しだすし、それに対して「これの方がいいね!」という人も現れてくる。便乗するのも、便乗作品を高評価するのも個人の自由だが、自分が公式のエムブレム作成のデザイナーの立場だったら堪えられないな。
自分は写真をそっくりそのまま描くこと、あるいはいろんな写真のパーツを組み合わせて架空の人物を描くこと、また自分が最初に思いついたと思うアンビグラムの作品を発表したものの何回かネタ被りを指摘されてしまったことを通じて「独創と模倣の違いは何か」とずっと探ってきた。未だにその区別ははっきりと説明できない。著作権法について調べても「パクリ」に関する判例が少なすぎる。
世の中の作品のネタ被りを見つけては「お前はパクリエイターだ」と揶揄してクリエイターの人生を破滅させている人たちは「独創」と「模倣」の区別はついているのだろうか。
既存のものをそっくりそのまま使って、元ネタがばれると困るような活動はしてはならない。しかし自分が悪意なく一生懸命になって作り、「どう?これ面白くない?これが『私』という人間よ!」という気持ちで発表したものが、図らずしも誰かのものと被ってしまったことを知った瞬間や、「パクリだ」と決めつけられた時は、まるで自分という存在が否定されたかのような苦痛がある。
この流行を機に「独創性とは何か」という哲学的な問題をより多くの人が考えるようになって建設的に答えが導き出されれば良いが、「オマージュ」や「インスパイアされた」という台詞も通用しない、デザイナーのみならず表現活動する人たちにとって厳しい時代に突入してしまった気がする。
この先どうなることやら。
#アンビグラム
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河野菜穂子 (火曜日, 03 4月 2018 06:05)
この文章を読んで、気持ちがスッキリしました。本当にあの頃はニュースや情報番組でとりあげられていましたね。似てるけど、このような形は誰もが思いつく。真似したと言われていた外国の人の作品を見たのかわからないのでは?どうして悪いやつの首をとったみたいにあれこれいい募るのか?デザイナー?呼び方がわかりません。の人は一生懸命何日も何日もかけて考えて作り出して応募されているのにせっかく一番ですよ、あなたの作品に決まりましたよと言われていたのに。なぜあんなによってたかってみんなにバッシングされなければいけないのか。本当に悲しかったです。あの方は今どうされているのか、このようなことは誰も忘れたように報道しません。SNSが広がって報道につられて無責任に色々言う人々にも怒りを覚えます。どうもありがとうございました。私と同じように感じていた人がいたことが嬉しかったです。
陳 洋平 (火曜日, 19 5月 2020 18:30)
ノムライッセイ作品の中で、
最も好きな作品【独創と模倣】
哲学的であり、私自身の"道"を照らしていただきました!
ありがとうございます!!
畏れ多くも、
コロナ禍のなかで、アンビグラムにチャレンジしました。
作品は、
【矛盾と真実】【真実と素直】です。
ノムライッセイ先生のフィロソフィーが詰まった作品をいつも楽しみにしております^_^